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新工芸について

日々の生活の中にモノは大量に存在し、ありふれているにも関わらず、僕らはその作り方を知らない。量産技術の発展の末に高度に​分業化が進んだ結果、僕らは自分で使う道具さえ、満足に自分で作ることができなくなってしまった。システムに依存するが余り、進んで歯車としての個々の役割に徹するようになり、知識を狭め、肩書きやブランド、組織の名前に価値を置く一方で、自らの手で完結できる仕事、手で生み出せる喜び、自らに備わった感性に無頓着な態度を社会に蔓延させてしまった。

一方、デジタルファブリケーションやインターネットは辛うじて現代にも残存していた手を動かすことや作ることを愛好する人々に新たな可能性を拓いた。(特に日本においては)長らく大企業に奪われたままになっていたモノを作るための手段や情報がもう一度手の中に還ってきたのだ。コンピュータを通して機械や現象と自らの感性をシンクロさせ、一つの完成度を目前にこしらえることに挑戦することが可能になった。かつて自分の焼き窯を手に入れた工芸家がそうであったように。これは新しい工芸の始まりだと思った。

この運動には一般的にメイカーズムーブメントやFABという言葉が使われているが、輸入した概念ではなく、日本という国の歴史や文化の中で地続きのものとして飾らず素直に捉えることができる言葉を考えたかった。そして我々はこれを「新工芸」と呼ぶことにした。ここまで述べたように新工芸は、かつて日本に存在していた工芸というものづくりに取り組む営みの気高さやこだわり、現代から見れば分野横断的な広範な知識や技術、個人または小さな組織に主体を置く仕組みそのものを引用するが、伝統工芸という言葉に代表するような手作業や古い技術、様式に囚われるものでは決してない。新工芸とは、一人間としての主体を失わず、分野を横断した総合的手段を使って表現または問題を解決しようとする態度のことであり、単なる方法論とも違う。

大量生産という仕組みはグローバリゼーションを指向し、あらゆる地方に同じサービスを同じ看板とともに提供した。反面、日本のどこに出向いても人間生活の景色の変化は乏しくなった。新工芸を通して工芸的な態度を復活させるということは、個人に表現力を与え、多様な人間の生活やそこから生まれる景色のダイナミズムを復活させることに他ならない。​

この活動が広がりを見せることを密かに期待するが、まずは我々からそれを実践したいと思い、新工芸舎を立ち上げた。大きな組織の力を借りずとも、解決できる問題があり、表現できることがある。その一つ一つに一人の工芸家として目を向け、耳を傾け、知恵を絞り、手を動かすことをしていきたい。気づけば人間として当たり前の営みを当たり前にできなくなり、言いようもない閉塞感が蔓延するこの社会を片目に見つつも、作るということを通してもう一度生きるということを問い直してみたい。

2020年 8 月某日